≪豪華キャストで贈る、この上なく贅沢な一人芝居×二本立て≫
作 / 井上ひさし 演出 / 鵜山仁
出演 / 内野聖陽 有森也実
◆ものがたり◆
さびれた芝居小屋の淋しい楽屋。遠くから客入れの演歌が流れ込んでくるやいなや、大衆演劇女座長・五月洋子は、座員一堂に檄を飛ばし始める。開演前の支度の最中も、口上や十八番の演目である「伊三郎別れ旅」の母と子が再会する稽古の場面に余念がない。そこへ捨てた息子との対面を、と出演依頼を携えたお客がやってきた・・・。
うってかわって、クリスマス間近の芝居小屋の楽屋。大衆演劇の座長・市川辰三は、夜の部も迫った40分前、大事な役を背負った役者が一人いなくなり、切羽詰まった様子で座員一堂に口立て稽古を始めている。そこへ孤児院でお世話になった一人の先生がやってくる。恩師との逢瀬に喜ぶ辰三だったが、なにやら大切な話がある様子で・・・。
≪内野聖陽コメント≫
井上ひさし先生の戯曲を演じられる!しかも、一人芝居!
今、私は、役者として久しぶりの喜びと興奮の中に居ます。
なぜなら、素敵な物語を演ずる機会を与えられたからです。
捨てた母と、捨てられた息子の物語。
ボクは、捨てられた男を独りで演じます。
井上ひさし先生の作品は『箱根強羅ホテル』が最初。
この時も“遅筆堂”の看板はご健在で、完成台本が上がったのは初日3日前ぐらい!ファックスが夜中にカタカタとなり出し、原稿が1,2枚やってくる。ところが私の出番は一向になく、稽古場に行ってもやることがなく先輩俳優だけが台詞をもらい、その日の稽古に合わせてブツブツ台詞を唱えている。「うわぁ~俺は稽古がしたくても本が来ないよ~!」と気が狂いそうな毎日でした。
ところが今回は、もう手元に本がある!!
井上ひさし先生のホンなのに目の前にある‼
もうこれだけで私は幸せ者と言うほかありません。
そして、美しくやさしい日本語と、心にしみる素敵なお話。
これだけ揃って燃えなかったら男じゃない、役者じゃない、…とばかりに喜んでいます。今度は稽古をいっぱいできます。天国で井上先生が丸いメガネの奥でニコニコしながら「内野君、これでダメな舞台だったらぼくのせいじゃないよ。だって本はできてるんだからね」と語られている感じです。天国にいらっしゃる井上ひさし先生にも笑って泣いていただけるように頑張ろうと思ってます。
そして、劇団を辞めてから実に21年ぶりにタッグ組ませて頂く鵜山仁さん。実は、鵜山さんは、ボクが文学座研修生の頃、初めてのプロの舞台に抜擢してくださったまさにその人なのです。21年経って、内野は、その程度かと、軽く足払いなのか、お、内野なかなか力をつけたな…となるのか、とにかく、鵜山さんの演劇人としての大きな胸に体当たりして、思いもよらぬエネルギーが爆発するのを楽しみにしているところであります。
この本を初めて読んだとき、“男のやせ我慢”のカッコよさ、いじらしさに泣けました。虚勢を張ったり、武士は食わねど高楊枝みたいな姿はあまり見かけなくなったように思いますが、この本には、いつの時代にも変わらない男子の生き様があると思っています。母に捨てられてから再会するまでを、井上さんの巧みな独り対話劇で魅せていく手法は、僕にとっても刺激的な冒険と戦いになるはずです。どうぞ内野聖陽の挑戦を目撃しに劇場まで足をお運びくださいませ!!!
≪有森也実コメント≫
はい、演ります。演らせて下さいとお返事したものの、今は怖くて怖くて震えています。『頭痛肩こり樋口一葉』、『シャンハイムーン』と2作品に出演させていただきました。井上先生の台詞は手前に道がついているんです。その道を歩かないと台詞に辿り着かない、発見の道で幸せな時もあるんですが、大抵は大変。今は交通許可書を貰ったといったところでしょうか、稽古までは一人旅、まず台本の活字を追って右往左往、稽古が始まれば心強い鵜山さんとカンパニーが一緒です。今回は女優の役、そして一人芝居、今こそ自我を棄て捨身で取り組むチャンス到来と震えながら覚悟を決めています。そして、気の早い話ですが、本番は1幕が跳ねた後で毎日内野さんの舞台が観られるなんて贅沢です。
≪鵜山仁(演出)コメント≫
『化粧二題』という作品には、芝居の面白さと難しさ、そして芝居が果たすべき役割についての期待、恐れ、決意がみなぎっています。
初演のパンフレットの前口上で作者は、この芝居は「二つの自己発見劇」だと表現しているわけですが、さて、ごまかしのない自己発見のシミュレーションが、どう舞台に立ち上がるか…。
有森、内野両座長の気合が、孤独で華やかな一人芝居の魅力を一層輝かせてくれることを、今から楽しみにしています。
≪井上麻矢(こまつ座代表)コメント≫
平成が終わり新しい年号になる年、大衆演劇を取り扱うのは一つの大きな試みでもあります。時代は変わり、人も変わります。その変化をしっかり見つめることで、失われてきた何かを模索する人間をしっかり描きたいと思い、再び演出家の鵜山仁さんにお力を借りることになりました。それが「化粧二題」です。
情と縁のもつれによって引き裂かれた親子をそれぞれ一人ずつが演じます。
子を捨てた母を演じるのは、有森也実さん。捨てられた子を演じるのは内野聖陽さん。
それぞれの宿命と対峙するお役をこなせるのはこの二人以外には考えられないと思いました。それぞれ様々なジャンルで活躍された二人の見ごたえのある舞台をぜひ楽しみにしてくださればと思います。
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